ムンクやピカソ棲んでいるらし襞の中

富子

保守ですか革新ですか襞さがす

暁美

レム睡眠の襞で迷っている羊

洋介

歳末という字にお尻つつかれる

さかゑ

人生を歩む明日の鐘が鳴る

春美

大根の白さへ母の背が伸びる

陽子

甘口が辛口になりもう大人

さよ子

競うことなければ平和維持できる

俊一

一億の大地で君と結ばれる

いく枝

子供の声響いた路地にすきま風

君代

不運でもはずれた道は避けて生き

まりこ

いくつもの蓋して今の平穏が

弘子

人情の温みに触れて旅終える

清孝

膝交えようやく解けてきた誤解

絹子

面白く生きてみようと色を塗る

まりこ

そしてまた一歩踏み出す朝が来た

美代子

分別の足らぬ女の先走り

澄子

バロメーターかもしれぬ延び切ったゴム

栄子

積読が定位置に鎮座またも冬

すみ子

悪かろうがこの世に生を受けた自負

悦郎

後少し空で待ってて今青春

京子

平均の余命私をノックする

芳竹

幸運を呼び込む鍵は笑顔かも

美和子

亡き母の声が聞こえる雛飾り

由美子

定年後外野の心地良さを知る

良一

風神雷神大暴れする金屏風

典子

皆帰るまでに暖房つけておく

久子

曖昧な返事に迷う介護の手

百合子

甘言に丸め込まれてまる裸

平一郎

脳みその在庫補充に本を読む

亮

ふりかえり安住の地はここと決め

岩本和子

里を捨て被ばく逃れる避難道

快生

水仙がくの字に耐える寒い朝

和郎

ドーナッツの穴から見えるこの笑顔

美恵子

師の教え鍵をかけない宝箱

ちえ子

わたくしを飾って老いを振り払う

喜代子

外野から言葉をかけてくれる人

孝代